「いじめを許さない教師の会」第一回全国大会
去る8月23日、「いじめを許さない教師の会」第一回全国大会が開催された。この大会は現職教師による日本初の全国大会であった。全国から教師を中心に約120名が参加した。
『いじめ問題に対して教師はどうあるべきか』
これが、全国大会のタイトルである。このことは、「いじめを許さない教師の会」が目指す教師の強い姿勢を表すものである。
「いじめを許さない教師の会」が目指すこととは何か?

Ⅰ「いじめは犯罪」「いじめを絶対許さない」という強い意志を持ち子供たちや保護者に訴え続ける教師を増やす。
そのための五つのポイント
①善悪の価値判断を明確に示す。
「いじめは絶対許さない」に子供や保護者に宣言する。
②「いじめは起こりうる」と常に考えている。
③いじめの隠ぺいを絶対にしない。
④いじめを放置せず、すぐに対処する。
⑤いじめられている児童生徒を徹底して守り通す。
Ⅱ いじめ問題への対処法を研究し提案する。
①被害者のケア(子供・保護者)
ⅰ不安を除去し、安全の確保
ⅱつらさや苦しさを受容し共感的な理解
ⅲ被害事実の文章化をアドバイスする。
ⅳ要望書の作成をアドバイスする。
②いじめた加害者への処罰
ⅰいじめの事実関係・きっかけなどの客観的な情報収集
ⅱ安全配慮義務に基づき、事態に応じた適切な措置
③加害者へのケア
ⅰ犯した行為への心からの反省・謝罪
ⅱ被害者への共感力を高め、再発を防ぐ
※①→②→③の順序であること
④周りではやし立てた子供への指導
⑤見て見ぬふりをする子供への指導
Ⅲ いじめを防止する方法を研究し提出する。
①いじめを許さない授業づくり
②いじめを許さない学校の体制づくり
③いじめ問題啓蒙のための書籍化
④いじめを許さない条例化。法制化にむけての要望
⑤いじめ通報システムの確立
⑥「いじめを許さない教師の会」としての勉強会
⑦「いじめを許さない教師の会」の組織を大きく強固なものにしていく。
これらの実践が社会に大きな影響を与え、教育改革を推進し、教師自身の反省を促し、その結果として子供たちの幸福が広がります。
最も大切なことは、「いじめを絶対許さない」「日本のどこであっても一人もいじめによる犠牲者・自殺者を出さない」という「強い継続した意思」であると思います。
「いじめを許さない教師の会」は誰のための組織でしょうか。「教育委員会」でも「学校」でも、「教師」のためでもありません。「学習者」である子供、そして、其の保護者の幸福のために奉仕し続ける組織でありたいと考えています。
この世から「いじめ」がなくなるその日まで・・・。
これは、「いじめを許さない教師の会」会長 後藤克彦からのメッセージである。
後藤会長の熱く、強い思いが、山形から全国の教師たちに発信され、埼玉・東京・神奈川・富山・北海道・高知・福岡・栃木・青森・千葉・愛知・秋田・静岡・大阪の各県から、教師たちが、この日、埼玉県さいたま市「埼玉会館」に集まり、熱論を交わした。
第一部は、「いじめを許さない教師の会 埼玉代表」 陶山直子の開会のあいさつで幕を開けた。陶山代表のもと、「いじめを許さない教師の会 埼玉」は5月10日に発足して以来、月1回のペースで土曜日の夜を基本に定例会を持っている。この定例会では、今までに以下の通り学習会を持った。これは、後藤会長のメッセージの中の、特にⅢ項目のあたる「いじめを防止する方法の研究」である。
第一回 6月21日(土)
○県教育委員会から出された小冊子「アイズ」を使い、「いじめ対応マニュアル」を学ぶ。
○それぞれの現場で対応して対応してきたいじめ問題を出し合って意見の交換をし、今後 の方針を話し合う。
第二回 7月26日(土)
○ルールや秩序のないクラスが荒れやすく、いじめに対する意識が育ちにくいという観点から、書籍から対応方法を抜き出し、討議。今まで読んだ書籍の中からよかったものを紹介。
○全国大会の打ち合わせ
今後の予定として
第三回 10月4日(土) PM6:00~9:00 浦和駅前パルコ10階会議室
ネットいじめについての講習会 講師を招いて
○昨今、大変な社会問題になっている「なりすましメール」「チェーンメール」「学校裏サイト」など卑劣なネットいじめについて。
○ネットいじめの対処法、生徒への指導方法、保護者への啓蒙。
○プロフをきっかけにして犯罪に巻き込まれる事件について。本来、防犯のための携帯電話が、危険なツールになっているネット社会の現状、子供たちと隣り合わせの危険についての学習。
第四回 11月8日(土)PM6:00~9:00浦和駅前パルコ10階会議室
○カウンセリングでの言葉掛けの実用例
○危機管理の卓上練習をいじめ防止の卓上練習に応用
以上が示され、「いじめを激減するために一緒に学びましょう。いじめを許さない教育を作り上げましょう。」「私たちが教師としての使命に燃え、解決する突破力を見つけられる会にしていきたいと思います。参加をお待ちしております。」という呼びかけがなされた。
続いて、NPO「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」代表 矢内筆勝氏より 教師と生徒による、学校での「いじめ防止システム」 矢内モデルの提案がなされた。
その中から、「学校側(教師・校長)ができること。すべきこと」は以下の通り。
(1)「いじめは悪(犯罪・人権侵害)である」ことの認識
(2)悪(いじめ)と闘う決意ーー被害者を保護し、加害者を指導する!
A 子供たちへの宣言・・・「いじめは人間として最低最悪の行為」「いじめは絶対許
さない」「すべての先生はいじめられている子供の味方」「絶対に君を守る」
Bいじめ対応組織の設置--校長、教頭、指導担当者を中心に全教員
Cいじめ通報システムの設置ーーいじめ告発箱・いじめ告発メール窓口など
D教師の「いじめ対応方法」の学習・研修
E子供への「いじめ防止授業」の研究・実施(総合学習・道徳の時間など)
生徒と学校の協力による成功事例として、茨城県筑西市立下館中学校の活動 「君を守り隊」が紹介された。
【 標語 】 いじめをしない、させない、許さない、そして君をまもりたい。
【 内容 】 生徒一人一人が「守り隊」の隊員となって、いじめられている仲間がいな
いかを見張る。
【 活動 】 ①いじめ情報収集部 いじめ目撃者や被害生徒からの正式な通報先
②校内パトロール部隊 加害生徒に対する威圧
< 参考図書 > 『いじめ発見システムをつくる』向山洋一監修 明治図書
『君を守りたい』中嶋博行 朝日新聞
基調講演では、「いじめと闘うアメリカの教師たち」と題して、
ジャーナリストの矢部武氏より米国流「最新いじめ対策」をお話いただいた。
米国では政府の助成金や寄付などで運営されるNPO(民間非営利団体)がいじめ防止プログラムを開発し、学校に提供している。コロラド州デンバーのNPO、クリエイティブ・ケアリング・コミュニティ(CCC 2001年設立)では、学校区(各地域の学校を管理する機関)や学校と契約し、指導員を派遣してまずすべての教職員の訓練を行う。先生から事務職員、スクールバス運転手、カウンセラー、警備員、校内カフェテリアの店員まで、あらゆる職員が1~2日の研修を受ける。研修では、教職員に、被害者がダメージを最小限にしながら対応する(他の人に助けを求めたり、現場を立ち去ったり、中傷を受け流したりする)方法や、傍観者を立ち上がらせる方法などを教える。教職員にロールプレイをさせる。加害者・被害者・傍観者の役割で。傍観者は無理して加害者と戦う必要はなく、その数が増えるだけで加害者には無言の圧力となり、いじめにくい雰囲気となる。
いじめ防止活動のNPO「ストップ・ブリング・ナウ」の調査によると、児童生徒の約75%は「いじめはよくない、何とかしたい」と思いながらも、行動を起こせば自分が孤立し次の標的にされるのではないかと不安になるのだという。
この不安を取り除いてやるのは、教職員の役割だ。
米国の教育行政では、いじめ対策の取り組みは各州で異なる。いじめ対策に積極的なワシントン州のシアトル学校区では、現在、約半数の小学校、約9割の中学校でいじめ対策を実施。
具体的には、小学校低学年にセカンド・ステップ(SS)、高学年にステップ・トゥ・リスぺクト(STR)、中学生にオルウェーズいじめ防止プログラム(OBPP)受けさせている。
SS(小学校低学年対象)
感情をコントロールし、衝動的な暴力行為を抑える方法
相手の気持ちを理解する共感能力
よい人間関係を築くやり方 などを身につけさせる
STR(小学校高学年対象)
傍観者の役割に焦点を当てる。
いじめを見て何もしなかったり、はやし立てたりする児童は加害者とおなじだと
教える。
OBPP(中学生対象) 4つの基本ルールがある。
① 他の生徒をいじめない。
② 他の生徒がいじめられていたら見て見ぬふりをしない。
③ 友達のいない生徒には声をかけ、仲間に入れるようにする。
④ いじめを見たら大人に報告する。
毎週30~40分間のクラスミーティングを設け、これを徹底できるようにロールプレイなどで練習する。大切なのは「繰り返し」練習することだ。
アメリカには「いじめ対策」に有効なプログラムと、それを提供、支援する団体がある。
日本でも教師はこのようなプログラム研修を受けるとよい。『Let's get real』
というビデオなら100ドル出ている。
以上、 確かに、「いじめ対策」に取り組むことは、校長次第のところもあり、大変なことだ。また、「いじめを許さない教師の会」が大変な局面を迎えることもあるかもしれない。しかし、だからといって「いじめ問題」を放置していてよいはずもなく、みんなで守り、後押ししていかなくてはならないと思う旨お話いただく。
第二部では、はじめに、 「いじめを許さない授業づくり」 と題して、「いじめを許さない教師の会」北海道代表の千葉孝司の研究提案がされた。
今回は、教師ができるアプローチの1つとして、道徳等の授業実践があげられた。
いじめをなくすためには2つのことが必要である。
1 「いじめは悪であること」を教え、厳しく行動を抑制すること。
2 「いじめなんかしたくないし、許さない」という道徳的心情を育むこと。
いじめをなくすために、教師にしかできないこと、それは日常の授業実践である。日常の授業実践の中でいじめをなくす力を育むこと。これが教師に求められていることではないだろうか。
いじめをなくす4つの力
共感する力
理解する力
振り返る力
行動する力
「共感する力」を育む 朗読劇を用いた授業 「KYだから」 の発表
【 ねらい 】劇中の人物や友達の発表の中に自分と似た感じ方があることに気づく。
思いやりについて知り、より良い行動の選択肢を持つ。
【 対象学年 】 主に中学生
【 展開 】 発問、指示、予想される生徒の反応
※ 資料参照 (資料に関しては「教師の会」までお問い合わせください)
この朗読劇では、小学生、中学生の協力をいただき、会場では涙ぐむ参加者の姿も見られた。
続いて、パネルディスカッション「いじめ問題に関して教師はどうあるべきか」が行われた。
富山教師の会代表 吉田かをる
「高校教師の立場から今の教育界の状況は異常。善悪を見極めることができる教師であってほしい。いじめ問題は、個人の力では解決できない。いじめプログラムが必要。」
NPO「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」事務局長 井澤一明氏
「子どもたちはいじめを止めてくれる先生を待っている。加害者に優しい教師はだめだ。」
矢部武氏
「いじめが起こることと、いじめを放置することは別。いじめが起こったことを先生の姓だとして隠ぺいしようという校長もいるが、そうではなく、いじめを放置することが問題。被害者には救済を、加害者には措置を、傍観者には立ち上がらせる勇気を。」
最後に、「いじめを許さない教師の会」会長の後藤の「自分の県でも、新しくいじめを許さない教師の会、を立ち上げようという方!」という呼びかけに、3人の先生が挙手された。
こうして、高知・大阪・青森に新たに「いじめを許さない教師の会」が立ち上がった。
以上、「いじめを許さない教師の会 第一回全国大会」は熱気の中に終了となった。
自分のかつてのつらく、苦しい体験を思い出したのであろうか。「教師の会、がんばれ!がんばれ!」と涙ながらにエールを送ってくれた初老の男性がいた。
「当日は行けないですけれども・・・。いじめられたことがあって、すごくつらかったから・・。」とカンパを申しでてくださった方がいた。
「いじめ」はこんなにも長い年月一人の人間を苦しめ続けるものである。
私たち教師は、この全国大会をステップとして、今後も具体的に行動していく。
「やらなくてはならない!」 未来を担う子供たちのために。その明るい未来のために。
何もやらないで、自分自身が後悔しないために・・。
がんばりましょう!
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